記憶と向き合う

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2022.06.17 [Fri]

・記憶と向き合う

私は、湖西の里山に隣接する住宅地で制作しています。
幼少より人が暮らす土地とそれ以外の境界に興味があり身近に感じられるこの地を選びました。私にとって境界とは、入り口に立った時その先は人為の及ばないと感じる場所です。ただし、境界は固定されているものもあれば存在を捉え切れないものもあり、無理に意識しようとすると畏れとなり制作から逃げ出してしまいます。制作は、明滅する不定形の存在をかたちにする時間。突然始まることや何年も手掛かりのないのが常です。その僅かなきっかけが境界に立つ時間です。気づかない間に境界をまたぎ記憶と繋がった時に制作が始まります。

・磁土と陶土

20代の10年間、叶松谷窯で磁器の制作を学びました。決して自身の力以上の結果が出ない磁土の潔さと向き合い、言葉ではなく制作に携わる方々の後ろ姿を追った宝の時間です。制作を通して様々な焼きものに触れるに従い陶土への興味が深まりました。高温で焼成しながら柔らかさを強調する従来の器ではなく、陶土に添い性質に応じた焼成から生まれる新たなテクスチャーを探しています。